オーバーウォッチの癌であるゴーツ。これに対するブリザードの対策はすべて、さらにオーバーウォッチを壊しただけに終わった。これに対してジェフ・カプランはついに決断する。OWLのシーズン4からはピックの222ロックを導入するというのだ。オーバーウォッチの世界大会でも222ロックが適用されるという噂が広まり、いち早くその情報を入手したアメリカチームに倣い、日本チームのトライアウトでも222ロックが導入された。
222ロックとは何か。これはダメージ2、タンク2、サポート2の構成を強制するものに他ならない。これによって、強制的に33構成つまりゴーツを排除する。
これに対してオーバーウォッチコミュニティでは議論が繰り広げられていて、否定派の意見というのは主に以下のようなものだ。
- 222ロックは組み合わせを絞ってしまうから、創造性を阻害する
- これがオーバーウォッチのランクマッチに導入された場合、マッチ時間が不均等になる
これらに対しておれの意見は、
- 阻害しない
- 不均等になるけど、結果的に均等になるようにバランスする
である。一つずつ説明する。
222ロックは創造性を阻害しない
オーバーウォッチはBANピックを導入すれば変わるかもしれない - GAAブログ
では、全組み合わせの中からゴーツを選択する確率というのは、現実的な組み合わせを考えたとしても実際には0.1%という超低確率であり、それがほぼ常に選ばれてしまっているということはオーバーウォッチのバグのようなものだ。という話をした。
まず、「創造性を阻害している」というのはこういうことである。ランダムなら1万回に1回程度しか選ばれないであろうものが、常に選ばれているのだ。創造性を阻害というよりは、思考停止と言った方が適切かも知れないが、似たようなものである。
では、222ロックによって組み合わせはどの程度になるだろうか。現在はダメージが16、タンクが7、サポートが7だから、全部の組み合わせは、16C2 x 7C2 x 7C2ということになる。これはざっと五万通りである。トータルで五万通りもある。この5万通りも可能性があるのに創造性が阻害されると言ってるのでは、何百万通りあったとしても無駄である。これが仮に10とか20とかいう数だったら、創造性を阻害してるという主張も成り立つかも知れないが、5万通りは十分に大きい数なので何ら問題がない。人間にはこの5万通りのすべてを比較することは不可能である。
むしろ、ダメージを一つも選ばない33に向かわなくするメリットの方が大きい。
また、本当に自由である方が創造性豊かになるというのも現実的には怪しい主張である。実際には多少の制限があった方が、その中で創造をする場合もある。実際、5万通りというのは人間にとっては把握出来ないくらい大きな数なのであるから、実質的に無限に近い。その上で縛りを与えるということはメリット以上の何ものでもない。
中には、222ロックではなく、範囲を持たせるべきだと主張するアホもいる。例えばダメージは1から4人とか、サポートは1から2人とか、そういう感じで範囲制限を与えるというものだ。しかし、222の時点で組み合わせが無限に近いのに、それ以上増やすという意味がよくわからない。マッチングアルゴリズムの実装を考えても、難しさが上がるだけ損なのでブリザードはこれを実装することはないと思う。
ランクマッチに導入されても待ち時間は結果的にバランスする
これは頭の中でシミュレーションをすれば明らかである。
ランクマッチに222ロックが導入された場合、一時的にはダメージ枠の待ち時間が長くなる。しかし、早くマッチしたいプレイヤーは必ず、タンクやサポートを選んでマッチ時間を短縮しようとする。これによってむしろ今までよりも、プレイヤーのピックプールを広げるという結果にもつながる。オーバーウォッチはタンクやサポートの存在が非常に重要なゲームだから、これらのヒーローを半ば強制的にプレイさせられることは、それ自身がオーバーウォッチのランクマッチの質を高め、結果的に浄化する。
だから、全プレイヤーがマッチ時間が長いことにストレスを感じるならば、結果的には待ち時間はバランスする。
では、この仮定に反するプレイヤーはどのようなものかというと、「ダメージじゃないと絶対にいやだマン」である。そして、それが特にランクマッチでは癌となる存在である。従って、このようなプレイヤーは、222ロック導入後にも残ることになる。しかし導入以前よりは少しマシにはなる。なぜならば、これらのプレイヤーはもともとそれほどオーバーウォッチに対するモチベーションが高くないから、マッチ時間が長いならば辞めてくれる可能性が高いからである。従って、導入以前よりは多少はマシになることが予想出来る。
仮に、ダメージ2にナチュラルトロールを引いたとしても、タンクやサポートを選ぶ人はそもそもオーバーウォッチを理解しようという気がある人だから、試合自体はコントロール出来る可能性が以前よりは高い。
今後どうなるか予想
222ロックをランクマッチに実装するには、すでにロール指定PTはあるのだから、マッチングアルゴリズムに変更を加える必要はあるものの、サーバの実装上はそう遠くないと考える。例えばシンプルに考えて、(ランク帯・ロール)で分けたキューを用意して、そこにプレイヤーをキューイングして、前から2ずつとっていくだけでいい。しかし222ロックではなく、上述したように範囲を許すとなると、これは一気に実装が難しくなると思われる。だから費用対効果を考えても、実装されることはないだろう。
UIも変更する必要があるが、それは、どのロールでエントリするかを選択するようにすれば実現は出来るから、最小の実装コストでいうとそう難しくないように見える。
実装のタイミングだが、まずは、OWLを実験場として222ロックに対するフィードバックを得て、これに対してポジティブならば、ランクマッチにも実装という流れになると思う。OWLでは口頭のルールだけで実現出来るが、ランクマッチでは実装が必要になるためだ。しかし、ゴーツに対して選手も飽きているなどの理由もあり、OWLでの反応はたぶん悪くならないし、結果としてランクマッチにも実装されることは間違いない。なぜならば、OWLとランクマッチの仕様を乖離させることはブリザードにとってメリットがないからだ。あくまでも自分のプレイしているゲームと同じものと見れるからOWLを見るのであり、ルールが全く違うものなど誰も見たくないからだ。また、プロ選手はSurefourのようにストリーマもやってる場合も多いから、そういうプレイヤーが自分のOWLでのパフォーマンスに影響するような異種のオーバーウォッチをプレイしなくなる理由を作りたくない。
そういう意味でも、OWLシーズン4の途中にでもランクマッチへの222ロックが実装されてもおかしくはない。
ロールキューを実装せずに、早いものがちで222を埋めるという実装も可能性としては存在するが、全く意図どおりにはならない上に、害にしかならないのでやらないと思う。
追記:予想は完全に外れた
上の予想を書いたのが2019年7月。222ロックが入る直前の話だった。
その後222ロックが導入され、2020年1月現在、OWはどうなったか。振り返ってみよう。
今後、321ロックという変則的な構成も検討されているため、 その意味でもここで一度222ロックを振り返っておきたい。
創造性は失われた
しかしこれは222ロックの問題というよりは、OPなヒーローの導入によるものが大きいと思う。 シグマやバティストがあまりに強いことによって、ピック出来るヒーローが固定されてしまった。 222ロックがさらに、選択肢を狭めたことは事実だが、222ロックの本質的な問題というよりは、 バランス調整の問題だと考える。
マッチ時間は全くバランスしなかった
これははっきりいって意外だった。
現在、DPSでは20分以上待つことがある。 一方でタンクやヒーラーは数分でマッチすることがほとんどだ。
本来ならば、待ち時間が長いことによって ネガティブ・フィードバックがかかって待ち時間は均衡するはずだった。
しかしそうならなかったのは、 OWが極端なDPSゲーになったからと、 DPSじゃないとOWをしたくない人が多いからだと思う。
むしろタンクやヒーラーの方がOWらしさの象徴であり、 DPSだけしたいならCSGOでもやればいいのにと思うのだが。